作品詳細

忘れられるためのメソッド

忘れられるためのメソッド

小川三郎

死んだあとも、それよりあとも

「満天の星空」

だったらもう
満天の星空じゃなくたって
かまわないんじゃないか。

いくつか星が
あるだけで
それでもう
いいんじゃないか。

こんなふうに
地球のうえで
一瞬
笑って
泣いたりして

やることがまだあるなんて
思わなくたって
いいんじゃないか。

未来からの手紙は来ない。
夜はいつも夢を見るから
せめて起きている間だけは
みんなで笑おう
そうしよう

なんて
教えたり
教えられたり
しなくても。

見上げると
満天の星空。

生まれる前も
それより前も
あれをずっと
見ていたとして

ずっと動かぬ一点だった
ただそれだけの
私であるなら

死んだあとも
それよりあとも
こまることなど
ひとつもないので。

詩集
2023/11/16発行
A5判 カバー 帯付

1,760円(税込)