作品詳細

記憶の糸

記憶の糸

西谷裕子

天上へゆつくりいそぐかたつむり

さびしがりやの小鬼が一匹
身のうちに小さく蹲っている
ひとりぼっちに慣れたふりをして
しあわせとうそぶきながら
致死量の花びらを浴びて……
やさしさが重いのだ
からまりあった記憶の糸を
俳句という小さな器に入れて
そっとほぐしていくと
さびしさの五段活用のその先に
懐かしい故郷が見えてくる

帯文より 燈書房 皆川燈

句集
2023/05/08発行
四六判 上製 カバー 帯

2,400円(税込)