作品詳細

耳の生存

耳の生存

菊石朋

耳たちが いちもくさんに駆け出す

「耳の生存」は一編の長編詩である。静けさから一気に細胞が活性化するようにイメージが流れだしていく。そのイメージは「耳」という象徴的な身体性、それと表裏一体の神秘性を強く感じさせる。

わたしは見ていた
それが
名前を与えられたようなはじまりならば
終わりはなくなる 泥土の深い静けさの中で 
頭骨は輝いているのだと それは、 
わたしの頭の中の ときめきのような痛みで 
共鳴しあい、そこから涙があふれるようだ
孤独というのならば
夏の空よりも晴れ 雨よりも冷たく
わたしのからだは目覚めている(「耳の生存」より)

詩集
2017/01/27発行
A6版 並製 カバー付

660円(税込)