作品詳細

架橋

架橋

上野芳久

言葉は架橋である

今、自分に必要なのは他者への架橋だと思っている。言葉、詩集がどれだけ架橋たりうるか、それが問われている。(あとがきより)

架橋という言葉をタイトルにした本作は、著者の人生・思想を言葉少なく、しかし雄弁に物語る。3,11をテーマにした「黒い波」では自身が妻を亡くした体験と重ね合わせてこう書いている

吊り橋を渡るような人生ではあるが、
遠くに幻を見るように、希望は持たねばならぬ
生き残ったものは死者の分まで生きねばならぬのだ

全体的に日本の原風景を思わせる美しい描写が続く中で、この一節はとても力強い。確かに人生は吊り橋のようなものかもしれないが、それだけではないはずだ。「架橋」という言葉に託すのは幻のようでも確かにある希望か。

詩集
2013/07/05発行
A5変 並製 カバー付き

2,640円(税込)