作品詳細

アイスバーン

インカレポエトリ叢書 7

アイスバーン

久納美輝

「踏み固めるのではなく、噛み砕くのだよ」



姿勢


なんとなく
生きていける予感がしていたが
姿勢がいい人はそれを
肯定することをしなかった
それは目の前の人のためなのか
目の前の人が自信を
なくしていくための行為なのか
わからなくて
目の前の人は表と裏を
くるくるのぞきこんだりしていた
それは学ぶものではなく、悟っていくものなのだ
目の前の人は
姿勢のいい人の口から漏れている
はっきりしている
紫色の息が
いやだ
なんとなくいやだ
目の前の人は姿勢のいい人が
背負っている大切なものを
ゆずりうけようとしている
すこしずつ増えてゆくものを
なにも言えない目の前の人は
重い、かたいと折れる




たまひろい


ボールを打つことだけをかんがえて 
打席に立てるのはいったいなんにんなんだろう
レフトで大声をだしているときふいにおもった
チームメイトがわらい、相手ベンチもわらう 
試合がおわるといつも通り練習がはじまり 
わたしは女子硬式テニス部のコートにとびこんだ 
ボールの謝罪にいくのだ 
赤面して頭をさげる 
女たちのうんざりとしたため息がきこえる 
声をあげることがにがてなわたしは 
だまってボールを取りにいく 
いやな目線にかこまれる 
じっさいにとりかこまれて 
くらったこともある 
わたしが守備についたのはその試合が最後であった 
わたしはあやまりかただけを野球でおぼえた



インカレポエトリ特設ページ

詩集
2021/02/28発行
四六判 並製

990円(税込)