七月堂通信

2016年05月の記事

七月堂古書部、オープン!

 2016年4月29日、七月堂古書部が遂にオープンした。
 長かったような一瞬だったような準備の日々の断片を自分の視点から回想してみようと思う。

 そもそも七月堂が古本屋をやろうということになったきっかけは2015年6月、『青い夢の、祈り』の営業で行った沖縄だった。(沖縄に行った顛末は「沖縄出張記」として過去に七月堂通信で連載したのでそちらをお読みいただければとても嬉しい・・・!)

 沖縄で受けた影響は七月堂的にも個人的にも計り知れないが、「七月堂でも古本屋さんができるかもしれない」という直接のインスピレーションを与えてくれたのは「市場の古本屋ウララ」さんだ。
 有名なお店なのでご存知の方も多いかもしれないが、こちらのお店、土産物屋やら乾物屋なんかが軒を連ねる市場の中にひっそりとある。ひっそりとあるといっても周囲の状況を考えればなかなかにミスマッチなので、発見した時の驚きはなかなかなものなのだが。
 「ウララ」さんを有名にしているのは立地に加えてその面積である。とても小さいのだ。しかしただ小さいだけではない。小さいけれど本に対する愛と夢がでっかく詰まったお店なのである。詳細は「ウララ」の宇田智子さんが書かれた『那覇の市場で古本屋』をお読みいただきたい。読み物としてもとても面白く、なんだかこんな素敵な店に押し売りの営業に行くのはとても心苦しい・・・と思ったものだ。

 そしてもう一点沖縄で受けた衝撃、「ついでに古本も売っている」というお店が結構あるのである。「商売」「仕事」に対する意識として知らず知らずのうちに頑なになってしまっていたのか、この「ついでにこれも売っちゃうぜ」というスタイルには感動した。なんだか肩肘張っていないので楽しいのである。どんな仕事であれ、お客さんと店員という関係性に一種の緊張状態は付き物だとは思うが、店側が脱力しているというのがこんなに楽しいものとは。こういう空間が身近にあればいいなぁと漠然と思ったのはこの時である。

 ついつい沖縄についてたくさん書きたくなってしまうが、我慢して、七月堂に戻ろう。
 七月堂に戻って驚いたのは、なんとなんと七月堂の沖縄っぽさである。
 この「沖縄っぽさ」はやはり我らがボス、知念さんの血のなせる業だろう。沖縄で感じた不思議な感覚、何だかよく知ったような雰囲気・・・それは七月堂の雰囲気なのだった。

七月堂の面積、脱力感、ホスピタリティー、そして何より持っている本の量、これを組み合わせたら導き出される答えは一つしかない。七月堂を古本屋にしてしまえ!

最初は軒先の本棚を掃除して、そこを古本屋にしたらというアイディアだった。(自分が何かを思いつくとき、大体夜寝る直前だ。結果興奮して寝付きが悪くなるのだが。)知念さんにそのアイディアを伝えるときは緊張した。結構良いアイディアだと思っていたので、さりげない提案を装いつつもかなりドキドキした。
「古本屋をやってみたらどうかと思うんですが・・・」
と自分が言ったかどうか記憶は定かではないが、知念さんが
「古本屋さん、やりたいですねえ・・・!」
と言った記憶はある。このボスの鶴の一声、とにかくこれで七月堂古書部計画が始まったのだ!

しかしこの時点ではまだ軒先古本屋の計画である。七月堂の雑然とした事務所の状況を考えればそれだけでも凄いアイディアだと思ったのだが、それがいつの間にか事務所の半分を改造する計画に変わってしまったのは何故だろうか?
自分はうろ覚えだったのだが七月堂、40年以上前に一度古本屋をやっていたのである。その時の顛末としては古本屋部門を任せた人が売り上げを伸ばそうとしてエロ本を店頭に並べ、風紀が乱れたので独立してもらったという事だったが、まあ七月堂が古本を売る土壌は充分以上にあったということだろう。やるとなってからの行動力にそれが存分に発揮されていた。

そして自分でも最大級のナイスな判断だったと思うのが、古本部門の責任者を知念さんの一人娘である後藤聖子さんにお願いしたことである。
聖子さんとは年に数度、大体年末の「忘年会」という名のうどんを食べる日にお会いするぐらいだったのだが、ひょんなことで沖縄に行く直前に簿記の講座を一緒に受けていたのである。(自分は挫折してしまったのだが聖子さんはちゃんと資格を取った。偉い!)
簿記の講座で顔を合わせる習慣があったので、聖子さんに話を通しやすかったことだけでも講座の成果がある。「聖子さん、なんか古本屋とか好きなんじゃねえかなぁ」とすぐに思いついたのも簿記講座のおかげだ。誰かしら古本部門のことだけを考えていてくれる人材は必要になるだろうというのでお願いしたのだが、その場で快諾していただいた。印刷している倉庫にわざわざ来ていただいてお願いした記憶がある。まあ我ながら唐突に無茶なお願いをしたものだと思うが。この辺の思い出は聖子さんサイドの話も聞いてみたい。

 聖子さんに古書部・部長をお任せしたことでも計画は加速した。親戚に本を譲ってくれないかと頼んでくれたり、家の奥深くに眠っていたボロボロの古本をクリーニングしてくれたり、とにかく七月堂古書部は聖子さんの力無くしては有り得ない空間なのである。(なのでお目当ての本を見つけた方は聖子さんに感謝してください。)

 思い出は数限りなくあるのだが、今はこれぐらいにしておこう。
 また折りに触れて思い出したことを書くのも面白いかもしれない。

 とにかく七月堂の過去・現在・未来が合わさって出来たのが「七月堂古書部」なのだ。

 週末はのんびりと営業しているので、足を運んでいただければ。直接思い出話をお聞かせできるだろう。

No.0048 2016年05月14日 O